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『カンガルー・ノート』 安部 公房

ある朝突然、<かいわれ大根>が脛に自生していた男。訪れた医院で、麻酔を打たれ意識を失くした彼は、目覚めるとベッドに括り付けられていた。硫黄温泉行きを医者から宣告された彼を載せ、生命維持装置付きのベッドは、滑らかに動き出した・・・。坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ――果てなき冥府巡りの末に彼が辿り着いた先とは?
急逝が惜しまれる国際的作家の最後の長編!

おぞましくも滑稽で、作者ならではの奇想が突き抜けたストーリー・・・脛からかいわれ大根、だなんて読んでいるだけで脛のあたりがムズムズかゆくなってきそう!
両脛にびっしり生えた植物のリアルな感触と、生と死の境いめをさまよう悪夢にも似たあいまいな世界観がみょうな浮遊感を生み出して、読み手をどことも知れない場所へと翻弄していきます。
自走式ベッドに乗せられ猛スピードで疾走しながら、目覚めれば夢に、眠れば現実に追いたてられる主人公。まるで底なしの袋のような・・・不条理に渦巻く世界。
お腹がすいて足からかいわれ大根をぬいて食べるシーンなど、ブラックなユーモアが散りばめられているこのお話は、読み進むにつれて言いようのない哀しみにつつまれていく不思議な本でもありました。それはもしかしたら「死」と「笑い」・・・ふだんは対極にあるものたちがしっかりと結びつけられているせいなのかも。

オタスケ オタスケ オタスケヨ オネガイダカラ タスケテヨ・・・
Author: ことり
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