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『ゴールデンスランバー』 伊坂 幸太郎

評価:
伊坂 幸太郎
新潮社
¥ 1,680
(2007-11-29)

仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた――。
精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界――、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。

J・F・ケネディの暗殺も、国家レベルの陰謀も、私のような一主婦には別世界のできごとで、それだけ聞けばちっともそそられはしないのに、伊坂さんの小説はほんとうにおもしろい。
お話の中心は、首相殺害のぬれ衣をきせられた主人公・青柳雅春の逃走劇です。彼は友人や知人たちとの「信頼」を頼りにしながら、姿の見えない大きな敵から逃げて、逃げて、逃げまどいます。
何年もの時間を行ったり来たりしながら描かれていくなかで、さらりと言い放たれたセリフや重要ではなさそうだった場面などが忘れたころに絶妙のタイミングで生きてきて、くすっと笑えたり、ガツンと思い知らされたり、じんわりと心にしみたり・・・‘小説のおもしろさ’がぎゅっとつめこまれた、ハラハラドキドキだけでは終わらせないそんな仕上がりに「やっぱり伊坂さん、最高!」なんて感心してしまうのです。
青柳雅春をはじめ、樋口晴子、森田森吾、カズ・・。宅配ドライバーの岩崎英二郎も花火師のロッキーも、ひとりひとりがほんとイキイキしていて、読んでいて楽しいことこの上なかった。そしてなんといっても青柳のお父さん、恰好よくて大好き。このお父さんの人生の指針?ポリシー?彼なりにすじが通っている考え方には思わず納得。だって、頭のまえに心が共感していたの。

「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」
お話のなかにたびたびでてきたこんな言葉に、人間のほんとうの武器は銃でも核兵器でも、人を押さえつける権力でもなくて、日常のなかで培われていくものだ・・・そんな伊坂さんのメッセージが伝わってきます。
私たちのまわりに溢れる、あまりにもたくさんの情報たち・・・その情報の氾濫で、何を信用してよいか分からなくなってしまうときも多いけど、まわりに流されず、誰かを信じることができること、これってなにより強い武器。
人を表面だけで見ようとはけっしてしないで、公平でくもりのない‘心の眼’を持っている人・・・私もそんなふうになれたらいいな。


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Author: ことり
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