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『東京日記2―ほかに踊りを知らない。』 川上 弘美

東京日記―卵一個ぶんのお祝い。』につづく「東京日記」第2弾。
ゆるゆる流れる粋な日常、ほやんと柔らかな文章・・・またしても川上さんの「東京日記」にほのぼの・にまにまさせられてしまいました。

ある時は、ぱあっとするために、近所の和菓子屋で鯛焼きを五枚買い、
次々に食べてぱあっとしたように思ったが、よく考えてみるとわたしは甘いものが苦手だった。そう思ったとたんに、ぱあっと、の、ぱあ、のあたりで気持ちがとまってしまう。
またある時は、古くなった布団と、折れてしまったモップと、壊れたオーブントースターを粗大ゴミに出し、
三十分おきに、こっそりゴミ置き場に行って様子をうかがう。十時半まではあったが、十一時に行った時にはもうなくなっていた。
もう二度とあの子たちには会えないんだ。悲しい気持ちで、思う。
またまたある時は、台所の流しのたらいの底がぬるっとしていて「ぬる」と名づける。
「ぬる」は性質は温厚だけれど、執念深いところがある。口癖は「閑話休題」。趣味はサラリーマン川柳。肉親の縁にうすく、両親とは早くに死別。食べ物の好き嫌いがけっこう多い。独楽のコレクションをしている。

いつもほんのすこし――川上さんいわく、五分の一(!)――だけ‘うそ’がまじっているらしい「東京日記」。私が大好きだった上の階の赤ちゃんのお話が、五分の四の‘ほんとう’ならば嬉しいのですけれど。
Author: ことり
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