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『白河夜船』 吉本 ばなな

評価:
吉本 ばなな
新潮社
¥ 420
(2002-09)

いつから私はひとりでいる時、こんなに眠るようになったのだろう――。植物状態の妻を持つ恋人との恋愛を続ける中で、最愛の親友しおりが死んだ。眠りはどんどん深く長くなり、うめられない淋しさが身にせまる。ぬけられない息苦しさを「夜」に投影し、生きて愛することのせつなさを、その歓びを描いた表題作「白河夜船」の他「夜と夜の旅人」「ある体験」の“眠り三部作”。定本決定版。

ばななさんの文章の浮遊感が好きです。漂っているようで、でもきちんと流れていてストーリーがちゃんと動くのがいい。
潮が満ちるように訪れるだるくて重たい眠りも、夜が、ひたすら静かに「ゴムのように無限に続く」感覚も、ああ・・わかるなって、あの覚束ない、言葉で言い表せなかったあの頃の心情をもっとも正確な言葉で言いあてられた、そんな感じがしました。
一ばんよかったのは、やはり表題作。花火とうなぎのラストが素敵・・・。彼女の物語はいつも、死や哀しみに打ちひしがれ世の中からふっと消えてしまいそうなところにいる人を、やさしくくるんであげるように描かれているのですよね。

しとしと雨にとじ込められた部屋。まるで子守唄みたいにばななさんの‘ことのは’が心にひびきます。とても儚くて、どうしようもない喪失感といとおしさがぐるぐるとうずまいて、私を少しずつまどろみの世界に誘ってくれる。
しんとひそやかな夜の底――
世界がつめたさに沈んで、カップのなかのココアだけがあたたかい。
Author: ことり
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