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『檸檬』 梶井 基次郎

評価:
梶井 基次郎
新潮社
¥ 420
(2003-10)

ほてった掌にしみ通るつめたさ、わずかに「鼻を撲つ」匂い――
高校の教科書ではじめて『檸檬』を読んだとき、想像のレモンが実物よりもすてきに思えた・・・そんな遠い日のことが思い出されます。

20編を収録した短編集。『檸檬』以外は初めて読みました。
31歳で夭逝したという梶井さんですが、どのお話からもするどい感性とかざらない本音のぶぶんを感じます。
彼が幼い頃から病弱だったせいもあるのでしょうか。いまにも壊れてしまいそうに繊細な、心の襞からつむぎ出される文章。そこには気どりが感じられないので、ふいに目にとび込んでくる一文が思いがけずこちらの内側にせまり共感をさそう・・・そんな瞬間がなんどもありました。
なにかある。本当になにかがそこにある。といってその気持を口に出せば、もう空ぞらしいものになってしまう。(『城のある町にて』)

『檸檬』以外で心にのこったのは、『Kの昇天』、『冬の日』、『桜の樹の下には』。
もの哀しく、詩情ゆたかな言葉たちでこぼれそう。
『冬の日』で主人公が大きな落日が見たくなり、「こんなに美しいときが、なぜこんなに短いのだろう」と、綺麗な景色のなかでふと思ってはかない気分になるシーン・・・これって私もおなじような経験があるので、とても気持ちが分かったのです。
Author: ことり
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