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『無関係な死・時の崖』 安部 公房

自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。

表題にもなっている『無関係な死』や、『透視図法』なども印象的ですが、ふるえそうに好みだったお話は『人魚伝』。
童話まがいの怪奇譚、とでもいえばいいのかしら・・・「人魚」のもつメルヘンティックなひびきからは、まったくかけ離れた不穏でおぞましい世界が広がっています。深い深い海の底、沈没船に閉じこめられた翡翠色の人魚をみつけ魅了された男が、彼女を風呂場で‘飼う’のですが、いつしか不可解なことが起こり始めて・・・。
愛という名の錯覚、捕らえた相手に囚われる狂気。ゾクリとうすら寒くなる奇妙な物語なのに、これからどうなってしまうの?と怖いもの見たさでどんどん引き込まれていく・・そんなおもしろさがあったお話です。

主人公の内側で起こる心の葛藤が論理だてて描かれ、その様子から人間の滑稽さがにじみ出てくる、さすが安部公房!な短編の数々。
Author: ことり
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