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『とりつくしま』 東 直子

評価:
東 直子
筑摩書房
¥ 1,470
(2007-05-07)

死んでしまったあなたに、とりつくしま係が問いかけます。
あなたは何に「とりつき」ますか?
そして妻は夫のマグカップに、母は息子のロージンに、弟子は先生の扇子に、なりました。切なくて、ほろ苦い、不思議な10の物語。

図書館でなにげなく手にした本・・・ひらいた頁にさらりと目を通したそのときすでに、借りて帰ることを決めていました。
「とりつく」なんていうと、おどろおどろしいものを想像してしまうかも。でもこの本に出てくる「とりつく」は誰かを恨んだり祟ったり、そういう意味合いはこれっぽっちもない、やさしいもの。この世に‘気になる人’を残して死んでしまった人が、そばにいられるモノになってふたたび舞い戻り、大切な人を見守るお話です。

とりつくしま係にうながされた主人公たちは、そのときそのとき、その人その人の想いでもって、さまざまなモノに「とりつき」ます。そして、‘ほんとうの’死の世界に旅立つ前のささやかなひと時を、それぞれが思いをこめて生きる・・・そこで生まれた物語はほろりと切なくて、じんわりと心にしみてくるのです。
もしも私がいま死んでしまったら何になろう・・、そう考えずにはいられなかった本。何に「とりつく」にしても、夫のそば、にはちがいないかな・・・。

作者の東さんは、歌人なのだそう。たくさんの思いや空気を短いフレーズにこめるのがうまいのは、きっとそのせいですね。読んでいて気持ちのいい文章でした。
Author: ことり
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