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『ジョゼと虎と魚たち』 田辺 聖子

『お茶が熱くてのめません』、『うすうす知ってた』、『恋の棺』、『それだけのこと』、『荷造りはもうすませて』、『いけどられて』、『ジョゼと虎と魚たち』、『男たちはマフィンが嫌い』、『雪の降るまで』。9つの物語。
短編集、といっても様々な種類のお菓子を詰めあわせた箱のようなものではなくて、成分はおなじだけれどいろんな味・・そう、サクマドロップスみたいな感じかな。
働くオトナの女たちの愛と別れを描いた中に、爽やかだけどクセのある(例えるなら、まさに薄荷キャンディ!)25歳の車椅子の女の子の恋物語(表題作)がひとつだけまざっています。

調子のいい男にふりまわされたり、情けない男をついつい許してしまったり・・・。でもまったく暗さなど感じさせないさばけた可愛らしさのある彼女たちの恋もようには「わ・・、この女ごころすっごくわかる!」と共感できるところがいっぱい。
田辺さんの表現はとても巧みで、私のなかの‘女’、それもふだんは見ないようにしている真実のぶぶんを刺激してきて何度もぎくっとさせられます。そして煮詰まりきったストーリーも最後には鳥かごの小鳥を逃がすかのようにぱっと空に放ってしまう、そんなところにもしてやられてしまうのです。
関西生まれの私のからだに吸いつくようになじむ、かろやかな大阪弁もよかった。
「恋ってやっぱりええなあ。ああ、女に生まれてほんまによかったなあ」
そんな思いが自然と口をついて出てきそうな、オトナの女のための短編集。

女は人に可愛がられるのが幸福なのだ、という神話を、女の子をもつ親は信じていますが、でも女の両手はいつも可愛がるものを求めて宙にさし出されているのではないでしょうか。(『それだけのこと』)
Author: ことり
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