<< 『蛇行する川のほとり』 恩田 陸*prev
『ヴィヨンの妻』 太宰 治 >>*next
 

『月と菓子パン』 石田 千

とうふや巡礼に、ねこみち歩き。
なつかしい空気がたちこめる、ほんわか下町エッセイ。
このほのぼのと切ない感じ・・なんとなく「夕暮れ時」がにあう気がするのは私だけ?
ぽってりとした夕焼け。よそのお家から漂ってくるおいしそうな夕餉のにおい。
ぱ〜〜ぷ〜〜・・・豆腐売りのラッパの音色がどこからともなく聴こえてきそうな。

年の瀬になると集まっておもちをつくる三姉妹のおばあさんのお話と、春の雨のなか棄ててあった小学校の椅子を酔いにまかせて持ち帰るお話が好き。
どこにでもいそうな猫たち、どこにでもありそうな居酒屋、いつでも誰でもできそうなお散歩。なのに石田さんの目を通してみると、なんともいえない味がある。
ささやかな日常をいとおしんでいる彼女の姿が文章からにじみ出て、生活にたいする‘きちんと感’が気持ちよく伝わってきます。

ひとの暮らしは、しゃべったり、乗り物にのったり、泣いたり笑ったりしていて猫よりも忙しいはずなのに、気がつくと、ゆるんだ目でぼんやりしてばかりいる。
変わっていく景色を見逃さないようにと声をかけてくれるのは、いつもちいさい生き物の健気な息づかいだと思って歩いている。
Author: ことり
国内あ行(石田 千) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -