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『ジャミパン』 江國 香織、(絵)宇野 亜喜良

評価:
江國 香織,宇野 亜喜良
アートン
¥ 1,575
(2004-09)

江國さんの短編小説に、宇野さんがあらたに絵を描きおろし出版されたもの。
お話じだいは短編集『すいかの匂い』にすでに収録されています。けれどこの本にはそれとはまったくちがう空気・・ううん、香気、とでもいうのかしら、なにかかぐわしいものが感じられて、本の頁を前にうっとりとしてしまいました。

少しずれた母子家庭の「女」の暮らし。
初夏の青く蒸した、すーんとつきあげるような緑の匂い。「根っこが腐る匂い」。
色っぽいけだるさについつい引き込まれ、彼女たちの一挙手一投足を今ここで感じているような気にさせられる、不思議で美しく、どこかなつかしい感覚。

母の、でがけに香水をつけるしぐさが好きだった。膝の裏と耳のうしろに、すばやく、おまじないみたいにつけるのだ。母がでていったあと、部屋に残っている甘い匂い。玄関にとりのこされた私の、はだしの足指。奥の部屋に戻って畳にうつぶせになる。奇妙なくらい風とおしがよくて、しずかだった六畳間。

絵本のなかに切りとられた幼い頃の記憶・・・にじむような空間に、あまりにも冷静な少女の視線がじっとりとまとわりついて、そこだけが鮮明な輪郭をもってせまってくるみたいです。


サイン本です↓
Author: ことり
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