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『空ばかり見ていた』 吉田 篤弘

評価:
吉田 篤弘
文藝春秋
¥ 1,800
(2006-01)

吉田篤弘さんの本は、心地いい。
読み始めたとたんにまわりの空気が柔らかくなり、辺りをながれる時間の粒があるとしたら、それらがいっせいに速度をゆるめるのが分かる感じ。
とろりとした夢のはざま、静謐な星空をゆらゆらたゆたうような心地よさ。

ちょっと見には繋がってないようで、じつは繋がっている――やさしい人びとが紡ぐ、夢みごこちでちょっぴりせつない12の物語。
お話どうしを繋ぐのは、お店をもたず世界じゅうを旅してお客さんの髪を切る「流しの床屋」ホクトさんです。そしてかならず、空を見上げる‘誰かさん’が登場します。
どこか遠い異国のおとぎ話を彷彿させる、ほんのりと月がともすような光と明るさが感じられるお話たち。心がほぐれて、じんわりみちてくる人のぬくもり。
吉田さんのお話は、冬の夜、木枯らしに身をちぢめながらお家に帰り、お湯をはったバスタブにゆっくりからだを沈めるような、さりげなくて、けれど極上のシアワセに似ている・・・そんな気がする私です。(もっとも、いまは暑い夏なのだけど)

『七つの鋏』、『彼女の冬の読書』、『星はみな流れてしまった』、『モンローが泊まった部屋』、『海の床屋』、『アルフレッド』、『ローストチキン・ダイアリー』、『ワニが泣く夜』、『水平線を集める男』、『永き水曜日の休息』、『草原の向こうの神様』、『リトル・ファンファーレ』。ひとつひとつのタイトルも大好き。
お菓子と本に目がない私は、「マアト」(口に入れたとたん消えてなくなってしまう、天使の羽根のようにはかないフランス菓子)と「冬読」(春、夏、秋と働いて、冬になると冬眠みたいに本を読む生活)がむしょうに気になってしまいました。
Author: ことり
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