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『八日目の蝉』 角田 光代

評価:
角田 光代
中央公論新社
¥ 1,680
(2007-03)
不倫相手の赤ちゃんを誘拐してしまった女・希和子目線の逃避行(前半)と、彼女に3歳まで育てられた少女・恵理菜目線で描かれた、事件の波紋と傷跡(後半)。
サスペンス・タッチの物語。

正直・・・前半は、気持ちごと入りこむ、そんな読み方ができなかった私でした。
たしかにドキドキとスリルある展開には違いありませんが、私には希和子よりも、なんにも知らない赤ちゃんや、娘を奪われたほんとうの母親のほうが気にかかってしまったから。身をよせることになる‘新興宗教’に思わず拒否反応を起こしたせいもあるかしら・・・。
ところが後半、恵理菜のお話ではどうしようもなく心が揺さぶられていったのです。
どうして。どうして。どうして。
どうして私だったの。ねえ、どうして私だったの。
「犯罪者に育てられた娘」として好奇な視線を浴び続けた恵理菜のなかにいつもくすぶっていた思い。声にならない慟哭。けれどある時、そんな思いを抱えて過ごしてきたのは自分だけではなかったと気づく――その場面が胸にズシンとひびきます。
希和子が赤ちゃんをさらったことの真相もつぎつぎ明らかにされていき、彼女だけが悪かったわけじゃない・・けっして赦されることではないけれど、彼女にも彼女なりの理由がちゃんとあったんだ。どんな事柄も、一方からほんのちょっと覗いたくらいで分かるはずもなかった、とあらためて気づかされた私・・・。

しあわせってなあに?不幸せってなあに?
親って?子供って?家族って?・・・この本に登場するいろんな女性たちのいろんな思いが、さまざまな問いかけとなって心にもったりとなだれ落ちます。
「私、自分が持っていないものを数えて過ごすのはもういやなの」
僅かでも、ささやかでも、自分が持っているものを数えていけたら、いまある人生の見え方が変わるのかもしれない・・・そんなことを思いました。
重たいお話のなかに、キラキラとした明るさが宿るラストシーンが好き。この道は未来とつながっている。大地をしっかりと踏みしめているような、なんとも言えないたくましさが好きです。
Author: ことり
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