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『TUGUMI』〔再読〕 吉本 ばなな

評価:
吉本 ばなな
中央公論社
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(1989-03)

病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った――。
少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。第2回山本周五郎賞受賞。

まだ学生だったころ、夏が訪れると本棚から引っぱり出して読んだ本、それがこの『TUGUMI』です。
口が悪くていやな女の子・つぐみを中心にしながらも、このお話にあふれているのはやさしさばかり。かがやく海と潮風につつまれた夏の景色はとても懐かしいものを運んでくれるみたいで、読んでいるといつも、私の胸はせつなさでいっぱいになってしまいました。
私がそだったのも海辺のちいさな町で、まいにちが濃くて楽しくてまっ黒に日焼けした、そんな思い出がよみがえってきます。もうにどと帰れない、きらきら煌めく遠い日々たちをたまらなく愛おしく思う・・・でも過ぎ去った日を懐かしむと同時に、いまこの時がかけがえのない瞬間であることもあらためて気づかせてくれます。

幼い頃から身体が弱くチヤホヤされたせいで、我儘で粗野な性格になってしまったつぐみ。そんなガラスで出来たはりねずみみたいなつぐみのことを、ぜんぶ分かっている、と言うふうなおおらかさでつつみ込むまわりのみんなのやさしいこと・・・。
かぎりなくやさしくて、すこし張りつめた光のプリズムを放つひと夏の物語。
Author: ことり
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