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『刺繍する少女』 小川 洋子

評価:
小川 洋子
KADOKAWA/角川書店
¥ 604
(1999-08-24)

寄生虫図鑑を前に、棄てたドレスの中に、ホスピスの一室に、もう一人の私が立っている。記憶の奥深くにささった小さな棘から始まる、ふるえるほどに美しい、愛と死の物語。

『刺繍する少女』、『森の奥で燃えるもの』、『美少女コンテスト』、『ケーキのかけら』、『図鑑』、『アリア』、『キリンの解剖』、『ハウス・クリーニングの世界』、『トランジット』、『第三火曜日の発作』。
日常から、あるいは日本からかけ離れた独特の世界たちは、美しさとおぞましさが立ち込める密やかな湖底の劇場で演じられているみたい。
死、不和、痛み、狂気・・・つめたく儚い10の物語。ひとつひとつ、じっくりと時間をかけて読みました。一歩踏み入れると生気をすいとられてしまいそうなほど奇異で残酷な物語の連なりに、いっきに読み上げることができなかったのです。

きれいなケーキに銀のフォークを突き立てるときのような、後ろめたい恍惚。
うす気味わるい描写も、背すじがぞくりとするようなラストシーンも、小川さんの手にかかるとそこに美しさが加わります。‘怪’ではなくて‘妖’のあやしさ。その美しさにとり憑かれ、私は彼女の書かれたものをつぎつぎひもといてしまうのでしょう。
 
「ご覧になりますか」
ついさっきまで身体の奥に潜んでいたのが信じられないくらい、ひんやりとした物体だった。小指の先ほどの大きさで、螺旋形をしていた。蔓科の植物のようでもあり、精密機械の部品のようにも見えた。
「ぜんまい腺です」
(『森の奥で燃えるもの』)
Author: ことり
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