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『がらくた』 江國 香織

評価:
江國 香織
新潮社
¥ 1,620
(2007-05)

誰にもとどめることはできない――愛の歓びと怖さ、その光と影を描き尽くす完璧な恋愛小説。
海外のリゾート地のプライベートビーチから物語は始まる。美しい少女を見つめている美しい中年の女性。少女は美海、15歳。女性は柊子、45歳。やがて東京へ戻った二人を主人公に展開される意表を突く人間関係。官能をかき立て、知性を刺激し、情感を揺り動かす、江國恋愛小説の記念碑的長編の誕生。


あまりにもはげしい恋は、人を静かに狂わせてしまうのでしょうか。
公然と愛人をもち、奔放に生きる魅力的な夫。自由なようでいて、完璧なまでに夫に縛られている妻。そうしていっそう絆を深めあうふたりの姿に、柊子が夫以外の男性に抱かれることも夫を愛するがゆえの行為だとしだいに分かってくるのです。
永遠にはとどめておけない恋のきらめきたち・・・
その輝きを柊子たち夫妻は永遠に持ち続けようとしているだけ。私には、とうてい真似のできないやり方で。けれど柊子たちばかりがゆがんでいるふうに思えなかったのは、すべての結婚生活が他人には計り知れない奇妙なバランスのうえに成り立っているものだからかな・・・。
そんな柊子の対極にいるのが、両親が離婚し、恋愛体質の母と暮す高校生のミミ。手足が長く美しい顔立ちの、「いましかないっていう種類の生命力」をもっている孤高の少女は、きらめきながら過ぎ去っていく瞬間の堆積――それは他人から見たらがらくたに映るかもしれない――をまだ知りません。どことなくサガンの小説を思わせる色香と孤独、ぽってりと倦んだ日々・・・少女のその後に思いをめぐらせてしまいます。

愛する人への感情を果物にたとえるならば、生のままで食べたいミミと、煮詰めてジャムにして「とっておく」柊子。

「生きている相手に対して、感情を不変のまま保存することはできないのよ」

手抜かりのない文章で、丁寧につむぎ出されるひややかな情熱。かぐわしい空気。
どんなに盲目的に愛していても、江國さんの恋愛小説がいつもどこか淋しいのは、人はどうしようもなく独りでしかない、そのことがきりきりと伝わってくるせいかしら。
にどと手にできない過ぎ去った瞬間の美しさ、とり返しのつかなさが、‘ある種の完璧’さで閉じこめられている、苛酷な――そして特別な恋のお話。


サイン本です↓

Author: ことり
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