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『冷静と情熱のあいだ―Rosso』〔再読〕 江國 香織

阿形順正は、私のすべてだった。
あの瞳も、あの声も、ふいに孤独の陰がさすあの笑顔も。
もしもどこかで順正が死んだら、私にはきっとそれがわかると思う。どんなに遠く離れていても。
二度と会うことはなくても。


江國さんの書かれたものを読むたびに、なぜか自分との共通点を探してしまうのです。「あ・・このぶぶんは私といっしょ」なんて思いながら読んでしまう。
本の虫、所有は束縛だと思っている、複雑なものがいや、お風呂と図書館とコーヒーが大好き・・・主人公・あおいと私の似ているところ。あまりにたくさんなので、嬉しいけれど戸惑いも感じてしまいました。
この本をはじめて読んだころにくらべると、ずいぶん環境が変わったせいもあるのでしょうか。ここ数年で「静かな生活」を手に入れた私は、怠惰で無為な暮らしぶりまであおいにそっくりだったから・・・。

ミラノであおいがいっしょに暮らすマーヴは、おだやかで、あおいととてもよく似ている男性。彼にやさしく甘やかされて幸せなはずなのに、そんな満ちたりた生活にもの足りなさを感じる彼女。むかしの男・順正のことが忘れられないあおい・・・。
無為を嫌い、たっぷりの情熱と行動力・・・動詞の宝庫のような順正。自分が自分らしくいられるためには、自分にないものをもっているパートナーが必要なこと、あおいはきっと分かっているのでしょうね。それは無意識の領域でおこなわれている選別で、相手の、自分とは明らかにちがうぶぶんに惹かれる私は、彼女の気持ちがとてもよく分かったのです。

淡々とゆるやかに過ぎていく日常。記憶にふたをして、遠くにおしやったつもりでいた過去。ある日、抑えていた情熱がいっきにほとばしる瞬間・・・あんなに焦がれていた濃密な時間、愛しい人との「約束」が果たされた時の意外な結末。

「人の居場所なんてね、誰かの胸の中にしかないのよ」

本を読んでいるあいだ、一度だけ行ったことのあるイタリアの美しい街並みがずっと脳裡にありました。刻まれた歴史が今なお息づいている街。それは過去と現在、両方のあいだを行き来する主人公にぴったりの街なのかも。

この本は、あおいと、そして恋に関するかぎりすべての半分の物語です。
あとの半分、順正の物語はもう片方(辻仁成さんの『冷静と情熱のあいだ―Blu』)にとじ込められていて、最後に幸せな気持ちになれたのを憶えています。でも、江國さんがつむぎ出す物語がどこか夢みがちにフワフワと流れていったのにたいし、辻さんのほうはもっと直截的でめめしい男性の姿が描かれていたような・・・。
2冊でひとつの物語。分かってはいるけれど、私は『Rosso』側の‘半分’が好き。

Author: ことり
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