<< 『泣かない子供』 江國 香織*prev
『泣く大人』 江國 香織 >>*next
 

『箱男』 安部 公房

評価:
安部 公房
新潮社
¥ 562
(2005-05)

ダンボールの箱を頭からすっぽり被り、街を徘徊する箱男。
箱に開けられた小さな穴から、世界を覗いている男をめぐる物語。

なんという凄いものを書くのでしょうか、安部公房という人は。怖いくらいに引力のある筆さばき・・・でも読み進めば進むほどカオスに陥る感覚で、頭の芯からクタクタに疲れきってしまいました。お話の語り手がつぎつぎに変わっていき、いまの「ぼく」はいったい誰なのか・・・ものすごく混乱したから。
中盤で出てきた「医者」が、色っぽい看護婦をつかって箱男の箱を買い取ろうとするところからお話は昏迷し始めます。医者は「贋箱男」となるのですが、じつは医師免許をもたず戦時中の「軍医殿」の名を借用している贋医者。そしてある日、軍医殿は変死体で発見されます。
箱男、A、B、C、D、医者、贋箱男、軍医殿(このなかのいくつかは同一人物)・・・本物と贋物が交錯し、さまざまな人たちが「箱男」として語ること、また、所々にさしこまれたショートストーリーが、ますます読む者の思考をこじれさせていくのです。
そこで、考えてみてほしいのだ。いったい誰が、箱男ではなかったのか。誰が箱男になりそこなったのか。

夢のなかでは箱をぬいでいるらしい箱男。すべては彼の幻想なのかしら・・・
語る側が語られる側に、覗く行為が覗かれる行為にすりかわる。もしかして、穴から外を覗くことは内側を覗くことに等しいのかしら――・・・かき乱された頭で、ふと考えていたのでした。
Author: ことり
国内あ行(安部 公房) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -