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『大きな熊が来る前に、おやすみ。』 島本 理生

徹平と暮らし始めて、もうすぐ半年になる。だけど手放しで幸せ、という気分ではあまりなくて、転覆するかも知れない船に乗って、岸から離れようとしている、そんな気持ちがまとわりついていた――。新しい恋を始めた3人の女性を主人公に、人を好きになること、誰かと暮らすことの危うさと幸福感を、みずみずしく描き上げる感動の小説集。

『大きな熊が来る前に、おやすみ。』、『クロコダイルの午睡』、『猫と君のとなり』。
恋のはじまりに怯えてしまう3人の女性たち。
どのお話の背後にも「暴力」が息をひそめ、主人公たちはみな心に翳りをかかえています。愛情を素直に受けとめることができないのは、他人から求められ必要とされることに不慣れなせい?地味にまじめに生きているのに、がんばればがんばるほど空回りしていく・・・動物をモチーフに描かれるそれぞれの恋のゆくえ。いまにも壊れてしまいそうな彼女たちの心の痛みがしくしく伝わってきました。
無垢な恋心を中心に置きながら、不穏で、ひんやりつめたい短編集。
けれどひんぱんに登場するお料理のシーンから、湯気や匂いがただよってくるようで、人と人が生活しているその雰囲気がじんわりと心地よかったのです。

一ばん心にのこったのは『クロコダイルの午睡』。
まぶしい明るさのワニ園と、深くて昏い水族館の対比。主人公の心に巣くうおぞましいぶぶん――負の力がつよいお話はあまり好きではないのですが、感情を伝えることが人一倍にがてな彼女に、心のどこかが共鳴したのかもしれません。
Author: ことり
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