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『古都』 川端 康成

評価:
川端 康成
新潮社
¥ 460
(1968-08)

捨子ではあったが京の商家の一人娘として美しく成長した千重子は、祇園祭の夜、自分に瓜二つの村娘苗子に出逢い、胸が騒いだ。二人はふたごだった。互いにひかれあい、懐かしみあいながらも永すぎた環境の違いから一緒には暮すことができない・・・。
古都の深い面影、移ろう四季の景物の中に由緒ある史跡のかずかずを織り込み、流麗な筆致で描く美しい長編小説。

もみじの幹に一尺ほど離れて咲く二株のすみれ。上のすみれと下のすみれはおたがいに知っているのかしら・・・千重子がお庭を見ながらそんなふうに考える冒頭のシーン。そこからいっきに世界に引き込まれてしまっていました。
はんなりと美しい京ことば、空に向かってまっすぐ伸びる杉木立、四季折々の京のお祭りや花の色――歴史ある京の街を舞台に広がる繊細でたおやかな物語世界。お話を彩るひとつひとつが素晴らしくきれいなのです。

呉服屋の千重子は西陣の職工・秀男に頼み、苗子のための帯を織ってもらいます。千重子にかなわぬ想いをよせる秀男は苗子に千重子の‘幻’をみて・・・。
どちらの姉妹にも感じるのは、杉の木のようにまっすぐで芯の通った意思の強さ。けれどそれぞれの姉妹が思う願望を千重子は声に出して訴え、いっぽうの苗子は千重子を気づかい胸の奥にしまい込みます。姉妹愛ともいうべき心の揺れがしずかに伝わってくるお話でした。
山深い北山杉の林のなかで、20年も引き裂かれて育ったふたごがおたがいの違いを目の当たりにするところ、そして初めて一夜をともに過すラストシーン・・・気づけばうっすらと涙ぐんでいた私です。
いましみじみと胸をみたすこの余韻を、日々の雑事でうやむやに壊れてしまわぬようそっと固めてとっておけたらいいのに・・・。

「さいわいは短うて、さびしさは長いのとちがいまっしゃろか。」
Author: ことり
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