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『キッチン』〔再読〕 吉本 ばなな

評価:
吉本 ばなな
角川書店
¥ 420
(1998-06)

よけいなものがそぎ取られた、ばななさんの感受性と彼女が大切にしているもの・・・それだけがむき出しになったようなお話たちは、まっすぐにこちらの心に届きます。
お話がシンプルなぶん、ある瞬間の心の動きや恋をした時に目にする風景などが、鮮やかに物語に映し出されているようです。

『キッチン』『満月―キッチン2』は、なんだかとても大切なことをあらためて私の胸の奥底から引っぱり出してくれたお話で、天涯孤独のみかげが最後の肉親をなくしたあともかけがえのない人たちに出逢い、その人をなくしてみてその存在の巨大さを‘肉親のとき以上に’実感する・・というのがすごい重さをもって伝わってきて、胸が押しつぶされそうになってしまいました。
『ムーンライト・シャドウ』では、恋人との死別からの再生を描いています。はかなげな鈴の音色、青い朝靄にうかぶ橋・・・こまやかな情景の、そして感情の描写。読むたびに涙がこぼれてしまう物語です。

ばななさんの初期の小説はほとんど中高生のときに読んだのですが、私はこのころの彼女の本がとくに好き。
この本に入っているのはすべて哀しみにみちたお話なのに、力強さをともなった爽やかな読後感が待っています。それはきっと、哀しみがずっとそこにとどまらないで、かなたにある希望が感じられるからなのでしょうね。明るい未来が感じられるお話ってやはりいいなあ、そう思います。

ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる。また会える人がいる。二度と会えない人もいる。いつの間にか去る人、すれ違うだけの人。私はあいさつを交わしながら、どんどん澄んでいくような気がします。(『ムーンライト・シャドウ』)
Author: ことり
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