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『パイロットフィッシュ』 大崎 善生

「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない。」
一行めから目にとび込んできたこんな文章に心をうばわれたお話。
19年ぶりに突然かかってきた1本の電話――その声でゆらゆらと心の湖底からうかび上がってくる、これは‘記憶’の物語です。
「君がたとえ僕の前からいなくなっても、二人で過した日々の記憶は残る。その記憶の君から僕は影響を与え続けられることになる。もちろん由希子だけじゃなく、これまで出会ってきた多くの人たちから影響を受け続け、そして今の僕があるのかもしれないと。
だからね由希子、僕と君とは別れていない。一度出会った人間は、二度と別れることはできない。」

本をとじてから、私のなかであふれ出したいろんな記憶。
もうずいぶん前に恋人と見た雄大な紅葉色の山肌、小さな頃おばあちゃんとおまじないでのぞいた古井戸、交通事故で亡くなった幼馴染に言われたひと言・・・そんなこれまでの人生でかかわってきたいろんな人たちの顔がいくつもよぎって思わず泣いてしまったのです。それは本を読んでいて、はじめてストーリーからすこし離れたところでこぼした涙だったかもしれません。
この本がすばらしいのは、けっして未練として過去を描いていないところだと思いました。これは過去を糧にして、前向きに歩くための本だから。
出会わなければよかった人なんていない。今まで出会ったすべての人たちのおかげで、私はいま、この姿でここにいるんだ。・・・そう、思わせてくれた本です。

「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない。」
すてきな言葉。これからもくり返しくり返し、かみ締めることでしょう。
このひと言で、視界がいっきにひらけた気分。
Author: ことり
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