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『三月は深き紅の淵を』 恩田 陸

わずか200部しかつくられず、誰が書いたのかすらわからない幻の本、『三月は深き紅の淵を』。
たった一人に、たった一晩だけ貸すことがゆるされた、一冊の本をめぐる物語。

本のなかに本があり、それぞれが4つずつ物語をもっている・・・謎が謎よぶミステリー仕立ての不思議な入れ子式ストーリー。
幻の本をめぐる外側の4つのお話――『待っている人々』、『出雲夜想曲』、『虹と雲と鳥と』、『回転木馬』――が、読んでいくうちにじつは内側(幻の本)の4つのお話――『黒と茶の幻想』、『冬の湖』、『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』、『鳩笛』――にゆるやかに呼応していることに気づきます。それがあからさまではない、微妙でさりげないところにたまらなく心惹かれるのです。
内側のお話たちをつなぐ隠喩めいたキーワードは「柘榴(ざくろ)」、外側のそれぞれのお話たちにも、フワリとあらわれてはいつのまにかすうっとかき消えてしまう幻の人物(小泉八雲?)が。
そしてどのお話も、‘物語’が中心にあります。
‘物語を読む’ということをとんでもなくステキにみせてくれるお話の数々に、私自身にも思い当たる気持ち――ほら。ひらいた頁を前に物語をひもといていくときのあの気持ち――がなんどもかさなり、物語ってほんとうは人が考えだしたものではなくて、ずっと昔からそこにあったものなのかもしれないなぁ・・・いつのまにかそんなロマンティックな想像をたのしんでいました。
「でも、本当の物語って、そういうものかも。存在そのものに、たくさんの物語が加速して加わって、知らぬ間に成長していく。それが物語のあるべき姿なのかも」

この本のなかでひしめきあっているいくつもの物語たち。
これらのお話が、今後どんなふうにふくらみ成長していくのかしら・・・!
「シリーズ」はまだはじまったばかり。つぎのお話に早くもワクワクしています。
Author: ことり
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