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『麦の海に沈む果実』 恩田 陸

三月以外にやってくる転入生は、学園を破滅に導くだろう――

三月は深き紅の淵を』の外側第四章『回転木馬』で、なんの前触れもなくとぎれとぎれ挟みこまれていたエピソード「三月の国」の物語の完全版です。
その脈略がわからずに、とまどいながら読んでいたお話のカケラたち。でもなるほどこんな大きな背景があったんだ・・・その設定だけで胸が高鳴るのをおぼえます。

湿原にかこまれた「青の丘」に建つ全寮制の学園に、二月の終わりの日に転入してきた水野理瀬。下界からほとんど切り離された、さまざまなしきたりや奇妙な伝説がのこる不思議な学園。ここは、三月の国――。
閉ざされた場所から失踪したという功と麗子。彼らの失踪の謎と、いわくつきの本『三月は深き紅の淵を』、あらたに起こる殺人事件・・・それらが理瀬自身に隠された秘密にからみあっていく影絵のような大伽藍。
その日の気分で男になったり女になったりする校長、ルームメイトの憂理(ゆうり)、三月の転入生・ヨハン、「ファミリー」の黎二(れいじ)たち・・・彼らと過ごす理瀬の学園生活は、秘密のお茶会、社交ダンスやハロウィンの宝さがし、薔薇園のガーデン・パーティと見た目は華やかながらも窮屈で、だれもが疑心暗鬼になり緊張感をにじませている、そんな空間です。
ゆるやかに螺旋をえがいた記憶をたどる不思議でいっぱいの物語を読み終えたとき、いくつものお話を読んだような、たっぷりした満足感がのこりました。このお話にでてくる本『三月は深き紅の淵を』が、シリーズ第一弾の内側とも外側ともちがう内容になっているというのも謎めいていて、すてき。

海より帰りて船人は、
再び陸(おか)で時の花びらに沈む。 
海より帰りて船人は、
再び宙(そら)で時の花びらを散らす。
Author: ことり
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