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『デッドエンドの思い出』 よしもと ばなな

評価:
よしもと ばなな
文藝春秋
¥ 1,234
(2003-07-26)

人生は、ときに漆黒の闇をつれてくる。
まるで落とし穴にでも落ちるかのように。突然。
そのなかに差しのべられた、あたたかな手。それはそれは貴く、涙が出るほどいとおしい、誰かの救いの手。
ばななさんみずから、「これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好き」と語る『デッドエンドの思い出』はとくに、そんなあたたかな‘手’を感じながら読みました。

カレーを作っていて、たまたま残ったヨーグルトやスパイスやりんごなんかを入れているうちに、そして玉ねぎの量なんかをちょっと多くしたりしたら、本当に百万分の一の確率で、ものすごくおいしいものができてしまったような、でも、二度とは再現できない、そういう感じの幸せだった。誰にも何にも期待してなくて、何も目指してなかったから、たまたますごくうまく輝いてしまった日々だった。
このイメージ。なんだかすごくすごく、わかる気がするのです。
婚約解消のいたでを、西山君がすこしずつ癒してくれる日々。宝物のように輝かしい光景。せつなく苦しい暗闇のなかにいてさえ、ふり返ってみれば生き生きと輝く一瞬一瞬をきちんと見つけられている――。
人はきっと、そのくらいには強靭にできているんだろう。
そして、幸せってそんなふうにして探しあてるものなのかも。

言葉をそのまま頭でひろっていくのではなく、そこにこめられたばななさんの思いが伝わってくるような、そんな読み方ができたことがむしょうに嬉しかった本。
ひとつひとつ感じたものをやわらかく受けとめて、しばしその余韻にひたりました。
表題作の他、『幽霊の家』、『「おかあさーん!」』、『あったかくなんかない』、『ともちゃんの幸せ』を収録。『幽霊の家』も、やさしい光で心をてらしてくれるようなお話で、私はとても好きです。
Author: ことり
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