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『白い薔薇の淵まで』 中山 可穂

塁(るい)が男だったらとか、自分が女でなければとか、思ったことは一度もなかった。わたしは自分の性を肯定するように塁の性も受け入れ、愛した。性別とはどのみち帽子のリボンのようなものだ。意味などない。リボンの色にこだわって帽子そのものの魅力に気がつかないふりをするのは馬鹿げている。自分の頭にぴったり合う帽子を見つけるのは、実はとても難しいことなのだ。

雨降る深夜、青山ブックセンターで運命的に出逢ったクーチと塁。
女と女。求めあうふたり。本物の恋と、むさぼり溺れるような最高のセックス。

「わたしと猫と、どっちが好きなの」と問えば「猫だよ」とあっさり言ってのける。他の女の香水のにおいをさせ、身体中に赤い痣をつけて平気で帰ってくる。自分のことはほとんど語らない。なのに嫉妬深くて、ついうっかり逆鱗にふれればすばやく姿を消してしまう。未練をこらえ、塁とは別れたほうがいい、と自分を納得させかけた頃、
「半熟卵ってさ、何分ゆでればいいんだっけ?」
名乗りもせず、時候の挨拶もせず、いきなりの大ボケをかます。
危険で、獰猛で、気分屋で、脆い。こんな女を心底愛してしまったクーチ。脳髄の裏側に植えた白い薔薇が何度も咲く、そんな恋は塁としかできない。その刹那だけがすべて。そんなぎりぎりの恋愛――・・・

身も心もふりしぼり、息をするのさえ苦しい、激しくて濃密な愛の物語でした。
なんど別れを選んでも、よびあってしまう彼女たち。そんなふたりの前では‘性別’という概念なんて、まるで意味をなくしてしまう。ただただ圧倒され、魂が揺さぶられ、私はたちまち抜け殻のようになってしまいました。
思いという思いがストレートにぶつかってきて、吹き飛ばされてしまいそう。

「塁のこと何でも知りたいのよ」
「ここにいるじゃない。それ以上何がほしいの?」
Author: ことり
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