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『雨はコーラがのめない』 江國 香織

甘えたがりの愛犬(オスのアメリカン・コッカスパニエル)・雨と、部屋をみたしては過去の記憶を呼びさます音楽について綴ったエッセイ。

雨と一緒に聴いた、数々のうつくしい音楽。ラヴェルのオペラ、シュワルツコップのアリア集、クイーンの最後のアルバム、マリアンヌ・フェイスフルの名盤・・・
私の知らないアーティストも知らない曲もたくさんあったけれど、だからこそ江國さんの奏でる言葉に身をゆだね‘その音’を想像する愉しさ。彼女が想いをはせる場所に影のようについて行く・・・それはそれは幸せな、いとおしい時間でした。
すこやかで切なく、野蛮な歌詞。
酒場っぽくて少女めいた気分になるアイルランドの歌い手。
絶望的に淋しく、眠いほど甘い、美しいラヴソング。
白い紙のうえを繊細な言葉たちが可憐におどり、見知らぬ旋律が耳元でふわりとひろがる。移ろいゆく季節のなかで、お菓子のように、お酒のように、彼女のそばにはいつも、音楽と雨がいる。  

記憶と、そのときには全く知らなかった現在とのギャップを、私はたのしいと思う。時間がたつのはすてきなことだ。たとえばかつては存在しなかった雨が、いまは存在する。(中略)
全然優雅じゃないけれど雨と一緒の、いつもの朝のコーヒーをのみながら、流れるところに流れていこう、と思った。雨もいるし。
「流れるところに流れていこう」・・・なんてすてきなひびき。
諦めるのとは違う。投げてるのでもない。あるがままを受け入れるのも、きっとひとつの勇気なのです。そんな江國さん――たとえささいなものであっても、きちんと真正面から対峙する人――に、私はとても憧れます。

天衣無縫で、しなやかで、賢くユニークな雨。
ひみつの添い寝、おやすみのキス。
ぴったりと寄り添うふたりは可愛くて、まるで恋人どうしみたい。

「いいもの聴かせてあげる」
Author: ことり
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