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『幸福な食卓』 瀬尾 まいこ

評価:
瀬尾 まいこ
講談社
¥ 1,470
(2004-11-20)

私はもともと、ちょっとおかしな、愛ある家族の物語が大好きです。
すっとぼけてて、どこかズレててマイペース。でもそこにはいつもほのぼのした愛にあふれていて、読んでいると思わず笑みがこぼれてしまう、そんな家族の物語が。
だからこの佐和子一家はもうそれだけで私をとりこにしたのだけれど、でもこの本の魅力はそれだけではありませんでした。
――たとえば。佐和子の家庭はけっして‘幸福’とはいえません。自殺をこころみて失敗した父さん、家を出て一人で暮らす母さん、人生から‘真剣さ’を捨てたのんきな直ちゃん(兄)と、ごく普通の中学生の佐和子・・・。このいっけんどうしようもなくアンバランスな家族たちは、それぞれの優しさと思いやりと明るさで、絶妙のバランスをたもっているのです。

‘幸福’とはほど遠いはずなのに、‘幸福’を感じずにはいられない。
お話の後半にはものすごく哀しいできごとが起こって、私の頬は涙でぐしょぐしょになってしまったけれど、それでもその痛みや苦しみさえも大きな優しさでつつみ込み、最後にはたしかな温度でほのかな未来を予感させてくれました。
・・・こんなに哀しいのに、なんでこんなにあったかいの・・・?

私は大きなものをなくしてしまったけど、完全に全てを失ったわけじゃない。私の周りにはまだ大切なものがいくつかあって、ちゃんとつながっていくものがある。

読んだあと、思わず抱きしめたくなる一冊。避けては通れない別離や喪失の場面で、人びとが拠り所にしたい一ばん肝心なものが、ここにあります。
Author: ことり
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