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『ナラタージュ』 島本 理生

評価:
島本 理生
角川書店
¥ 1,512
(2005-02-28)

壊れるまでに張りつめた気持ち。
そらすこともできない――二十歳の恋。
大学二年の春、片思いし続けていた葉山先生から電話がかかってくる。泉はときめくと同時に、卒業前に打ち明けられた先生の過去の秘密を思い出す。
今、最も注目を集めている野間文芸新人賞作家・初の書き下ろし長編。

はじまりは、ほんの小さなときめき。芽生えたばかりのかすかなものが熱を帯び、加速してゆき、たとえその恋がどんな形であったとしても突き進んでしまった気持ちはそこからもう立ち去り難くなっている――。
誰かに強く惹かれる時、相手の心の奥に隠されたどうしようもない孤独感とか挫折感、どちらかといえば陰の要素にこそ惹かれてしまう、そういうことも多いような気がしています。
この小説に出てくる泉もまさにそう。こんなにずるい先生なのに愛してしまう、抑えなくてはとわかっていながら止められない気持ち・・・大きな淋しさが二人の距離を縮め、そうしておなじ時間を過ごしているうちに、その抱えているものがいつのまにか二人に大きくのしかかってくる、という哀しい現実がせつない。
 
「あなたはひどい人です。これなら二度と立てないぐらい、壊されたほうがマシです。お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある」
砂地から水辺へ駆けるように墜ちていく、持てあますほどの欲情・・・
途方もなく甘く苦しい二人の関係・・・
泉のほとばしる愛に、私自身とっくに封印したはずのあの痛みはよび覚まされ、胸がつぶれてしまいそうでした。そしてそれは過去の出来事として完結したものではなくて、これからもずっとおなじ痛みをくり返し、いつまでものこる恋だということに。
ゆれ動く恋心の襞が繊細に描かれていて、久しぶりに心がふるえた私です。
Author: ことり
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