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『袋小路の男』 絲山 秋子

評価:
絲山 秋子
講談社
¥ 1,365
(2004-10-28)

袋小路の奥に住む男(小田切)に惹かれつづけて、指一本触れず、何も起こらず、それでもなお彼を忘れることができない「私」の12年。
小田切から相手にされているのかいないのかもわからないまま高校を卒業し、大学から社会人へと成長しても、「私」は相変わらず小田切から離れられない。彼から誘われれば万難を排して準備するし、大阪に転勤したって彼が骨折したと聞けば、毎週かかさず東京の彼の病院まで往復する。
それを小田切が望んでいてもいなくても、まったく重要ではないし、そして小田切はそんな「私」を中途半端に受け入れては中途半端に突き放す。なかば確信的に。

何の約束もない、近づきもしなければ離れもしない――あいまいな距離をたもちつづけるふたり。だけどそこには、‘そこにしかありえない’親密さがありました。
小田切という男への反感も手伝って、歯がゆい気持ちをなかなかぬぐえない私でしたが、ラストまで読むことで、ようやくこの小説のほんとうのせつなさを知ることになったのです。

あなたを袋小路の奥に追いつめるようなことは一切しない。
追いつめてしまえばすべてが終わる。
だから、今のままでいい。今のままがいい。
「私」はすべて納得ずくで、まるで生殺しのような今の状態を楽しんでいるみたい。「私」と小田切の普通ありえない親密さは、だからこそそこにしかありえない、生まれるべくして生まれたものなのかもしれません。
Author: ことり
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