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『ユージニア』 恩田 陸

評価:
恩田 陸
角川書店
¥ 1,785
(2005-02-03)

ユージニア、私のユージニア。
私はあなたと巡りあうために、ずっと一人で旅を続けてきた――

昭和48年夏、北陸のK市にある名家・青澤医院で、無差別に17人が毒殺された。
現場にのこされたのは謎めいた一通の手紙。
それから約10年後、青澤家の近所に住んでいた当時小学生の雑賀満喜子が、大学生となり事件を小説化。小説『忘れられた祝祭』はベストセラーに。
そしていま、ふたたび事件について調べようとする人物が・・・。
時を経て、暴かれようとする街の記憶。果たして真実にはたどり着けるのか?

当時の関係者にインタビューし、質問ぶぶんを省いて返答のみを記す・・そんな形式を中心に構成されたサスペンス・ミステリー。
世間を震撼させた事件について後になってさまざまな人たちにだれかが聞いてまわる、という筋立ては宮部みゆきさんの『理由』を連想させるのだけど、こちらはもっとあいまいで不親切。紗がかかったような、グレイな心証をつよく受けました。
お話の中からうかび上がってくる、青澤家でたったひとり生き残った盲目の美少女・緋紗子の存在。知れば知るほど、彼女の妖艶で小悪魔的な魅力が浮き彫りになっていきます。彼女を直接描くのではなく証言や回想シーンをつないで人物像をかたちづくっていく、そんな手法も一役かっているのでしょうね。

「逆に、事実って何だろう、と何度も考えましたよ。それぞれの人は皆事実だと思って喋っているけれど、現実に起きた出来事を、見たまま話すのって、難しい。というよりも、不可能ですよ。その人の先入観とか、見間違いとか、記憶違いがあって、同じことを複数の人から聞いたら、どれも必ず少しずつ違う。(中略)だから、実際に起きたことを本当に知るというのは絶対に無理なんだなあと思いました。」
たくさんの証言をかさねているのに、人によって意見がさまざま。見え方や切り口がさまざま。どれを信用していいのかわからない、どこまで行っても真相は藪の中・・・読み進むにつれ、どんどん不安と緊迫感につつまれていくのです。
そしてついに真相をつかんだかと思ったら、それは指のあいだからぬるりとすべり落ちていってしまう。犯人にたどり着くことと、真実にたどり着くこととは違う。
読むほどに謎が湧いてくる、不思議で、そして言葉えらびは悪いかもしれないけれど、とても不気味なお話だと思いました。
Author: ことり
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