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『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン』 リリー・フランキー

リリーさんが最愛の母・オカンについて語る自伝的小説。
これほどまっすぐ母への思いを綴った本に、はじめて出逢った気がします。

これは大都会東京に惹かれ焦がれて、なにかをめざすために上京し、はじきとばされ故郷に戻っていった「オトン」と、おなじようにやって来て、帰る場所をなくしてしまった「ボク」と、そして、一度もそんな幻想を抱いたこともなかったのに東京につれて来られて、戻ることも帰ることもできず、東京タワーの麓で眠りについた、「オカン」とのちいさな物語――。

もう、ここで私が何を述べるとかいうよりも、まずは読んでほしいと思います。
唯一にして最愛の「母親」という存在。その人とのかけがえない思い出と、その人が人生を削って与えてくれた深い愛情、そしてその人を永遠にうしなってしまうかもしれない底無しの恐怖と、亡くした後でおしよせたどうすることもできない後悔・・・。
この世界と自分。その曖昧な間柄に流れる時間は果てしなくなだらかに続くが、誰にでもある瞬間から、時の使者の訪問を受ける。(中略)
それまで、未だ見ぬ未来に想いを傾けて緩やかに過ぎていった時間は、逆回転を始める。今から、どこかにではなく。終わりから今に向かって時を刻み、迫り来る。自分の死。誰かの死。そこから逆算する人生のカウントダウンになる。今までのように現実を回避することもできない。その時は、必ず誰にでも訪れる。誰かから生まれ、誰かしらと関わってゆく以上。
私にも最愛の母がいます。田舎で、夫婦仲よく元気に暮らしています。このお話の「オカン」とは、ちがうところも似ているところももちろんあるけれど、娘である私への愛は‘絶対’で、それは「オカン」も私のお母さんもおなじだと思いました。
迷惑や心配のかけっぱなしで、いくつになってもあまえていたくて、恩返しもなかなかままならないけれど・・・そう、「人生のカウントダウン」はかならず訪れる。
その時までに、私に、何ができるの?
大切にしなくちゃ。孝行しなくちゃ。私には、まだ時間があるのだから。

母からうけた愛の深さと、母にたいする思いのつよさに比例して、その何倍もの重さと苦さで、この物語は胸にひびくことでしょう。涙は流れても流れても尽きることなく私の頬を濡らしつづけ、そばにあったティッシュの箱はからっぽになりました。
遠く離れたいまになって、いっしょに過ごせる時間がわずかになって、その存在の大きさを、ありがたみを、ようやく痛感するなんて。まったく子どもというのは、なんて愚かしい存在なのかしら・・・。

「お母さん、長生きしてね」
Author: ことり
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