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『夜のピクニック』 恩田 陸

評価:
恩田 陸
新潮社
¥ 1,728
(2004-07-31)

みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。

夜を徹して80キロを歩き通すという、高校生活最大のイベント「歩行祭」。
生徒たちは夜目にもめだつよう全員がおなじ白いジャージに身をつつみ、親しい友人と恋の話をしたり、将来への気持ちを打ち明けあったりして――夜がつれてくるあの雰囲気の中でしか話せないことがある――、思い思いに一夜を過ごす。
そんななか、高校生活最後の歩行祭にのぞむ甲田貴子は、人知れず一つの賭けを胸に秘めていた。心のわだかまりを清算し、前向きに生きていくための、卒業に向けた最後の賭け。それは一度も話したことのないおなじクラスの西脇融(とおる)に話しかけるということ。
どちらからともなく相手を避け、言葉の代わりに刺すような視線をかわし、‘ある事実’を親友にすらひた隠しにしたままおなじクラスになってしまった融と貴子。二人はそれぞれに憎しみとも妬みともつかない複雑な感情を鬱々と抱えていた・・・。

歩行祭もピークをむかえ、足は棒になり、疲労は増す一方、身体は悲鳴をあげ始める。貴子は融に声をかけるタイミングをなかなか掴めずにいた。気ばかりが焦る。
高校最後の行事。もう一生、1000人もの大人数で、この道を歩くことはない。
当たり前のようにやっていたことが、ある日を境に当たり前でなくなる。こんなふうにして、二度としない行為や、二度と踏み入れない場所が、いつのまにか自分の後ろに積み重なっていく。
真夜中の神秘性、高校最後という独特の高揚感、極限状態の肉体。
恋愛とはちがう「お互いを理解したい」という想いのゆくえは――?

朝からまる一日かけて歩き通す、ただそれだけの、とてもシンプルな構成。
そのなかに、お互いの存在が気になる融と貴子がいて、気のあった仲間たちの屈託のないおしゃべりがあって、目にとび込んでくる一瞬一瞬の景色だとか高校生活への感慨などが加わって、とんでもなくステキな青春小説に仕上がっています。
私の出身高校にも、42.195キロを歩き通すという途方もない行事があって(こんなに爽やかなものじゃなかったけれど・・・)、その時のことを懐かしく思い出しました。
ゴールまぢか、想いを伝える瞬間はとてもまぶしくて、読んでいるだけで晴れやかな気持ちになれます。忘れていたトキメキが目を覚ます、・・・そんな感じかな。
Author: ことり
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