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『沖で待つ』 絲山 秋子

評価:
絲山 秋子
文藝春秋
¥ 1,000
(2006-02-23)

仕事のことだったら、そいつのために何だってしてやる。
同期ってそんなものじゃないのかと思っていました。
住宅設備機器メーカーに同期入社して、福岡支社に配属された太っちゃんと女性総合職の「私」。営業マンとして共に働くうち、「仕事のことだったら、何だってしてやる」関係が育っていく。二人の間に恋愛感情はない。その後「私」は埼玉に転勤、太っちゃんは社内の女性と結婚。ふたりはどちらかが死んだら、先に死んだ方のパソコンのHDDを後に残った方が破壊するという約束を交わした・・・。
仕事で結ばれた男女の信頼と友情を描いた表題作に、『勤労感謝の日』を併録。

『勤労感謝の日』も捨てがたいけれど、やはり『沖で待つ』が私は好きでした。
絲山さんがデビュー作『イッツ・オンリー・トーク』から描かれている得意分野、「男女間の微妙な友情」の集大成ともいえそうなお話。一貫して‘ですます調’で懐古的に語られるのが特徴で、突然死んでしまった太っちゃんとの約束を果たすところが切ないのです。
太っちゃんは死んだあとも幽霊(しかもしゃっくりが止まらない)となって自分が住んでいたマンションに居座っていて、そこを訪れた「私」と言葉を交わすのだけど、これってもしかしたら、最後に「私」の秘密を私たちに明かすための心憎い演出かしら。
へらず口を叩きあい、パソコンに秘めた悪シュミを文字通り‘死守’しあう――、
くだらなさと強固な信頼関係とのバランスが、切ないなかにもたしかな光をともしてくれるようです。
Author: ことり
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