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『ベルカ、吠えないのか?』 古川 日出男

1957年、人類史上初の人工衛星の打ち上げに成功したソ連のスプートニク1号。
その一か月後に打ち上げられたスプートニク2号には、宇宙空間の高みから地球を見下ろすある生命体が乗っていた。それが犬のライカ。人より先に宇宙飛行をしたのはイヌだった。

今回、お話の舞台となるのは太平洋戦争の終了からソビエト崩壊までの東西冷戦の時代。その時代をイヌの視点からとらえた物語。
日本が占領していたアリューシャン列島に残された4頭のイヌたち。日本籍の軍用犬だったそのイヌたちは、やがてアメリカ、シベリア、ベトナムと世界各地に散らばっていき、自らの血統を脈々と継続させ、系統樹を繁栄させながら数奇な運命をたどります。人間の歴史や都合に左右され、ひどい目に遭って、それでもイヌたちは生きる。生きる。生キル。
並行して描かれる、ソヴィエト崩壊後のロシアを舞台にしたロシアマフィアとチェチェンマフィアの抗争。イヌを軍事訓練する老人と日本人ヤクザの娘・・・。イヌたちの歴史がこの老人と少女に、どうクロスし、どう繋がっていくのでしょうか。

イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?
イヌ紀元五年、お前は巨大な性器を反らせながら、とうとう現われる。宇宙からの視線の痕跡に衝き動かされて、地上の果てまで駆け、ついにソ連領の辺境に現われる。
硬質な断定口調。グイグイと読ませてしまう独特の文体。
それは何かとてつもなく大きな存在が、どこかからながめているように語られていく世界。そしてその大きな存在は、高貴で誇り高いイヌ世界に相反するかのように、人間世界の愚かしさを皮肉たっぷりに謳い上げるのです。
ああもう、なんてスケールの大きな小説!すべてが繋がる瞬間には、ほんとうにゾクゾクしました。世界史に詳しい私だったなら、きっともっと楽しめたでしょうに・・・そんな悔しさが頭をもたげます。
20世紀後半、冷戦の時代。
膨大な時間の流れと果てしなき大地。生と死と、めくるめく疾走感。
そして、ふり仰ぐはるか蒼穹には宇宙犬――とにかくこの壮大さが圧巻なのです。
Author: ことり
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