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『風味絶佳』 山田 詠美

評価:
山田 詠美
文藝春秋
¥ 1,327
(2005-05-15)

「甘くとろけるもんは女の子だけじゃないんだから」。孫にグランマと呼ぶことを強要する祖母・不二子は真っ赤なカマロの助手席にはボーイフレンドを、バッグには森永ミルクキャラメルを携え、70歳の今も現役ぶりを発揮する――。
鳶職の男を隅から隅まで慈しみ、彼のためなら何でもする女、「料理は性欲以上に愛の証」とばかりに、清掃作業員の彼に食べさせる料理に心血を注ぐ元主婦など、お互いにしかわからない本能の愛の形を描いた珠玉の6篇を収録。

「小説は、私にとって、ままならない恋そのものである」
こう語る詠美さんの「ままならない恋」がいっぱいにつまった短編集。
執着、憐れみ、自己満足・・・恋愛というのは愚かで怖い。二人だけしか共有できない世界のなかに入りこみ、その狂気にすら気づかない。
それでも人は恋することをやめません。なぜって人生を味わい深くするのもやはり、恋だから。

『間食』、『夕餉』、『風味絶佳』、『海の庭』、『アトリエ』、『春眠』。肉体をスキルとした職業に就く男たちとその恋人を、食べものにからめた6つの風景。
なかでも、執拗なまでにこまかく丁寧に料理の手順を綴っていく『夕餉』がたまらなく好きだった私です。濃やかな情景描写、さりげない瞬間。どこか江國香織さんの短編世界にも通じるしずかな狂気・・・。
こういう本を読むにつけ、食と性はけっして切り離せないものだなぁとつくづく思ってしまいます。豊かでえも言われぬ風味がじわじわとにじみ出し、心を満たす甘すぎない恋のおはなしを、召し上がれ。
Author: ことり
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