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『うたかたの日々』 ヴィアン、(訳)野崎 歓

青年コランは美しいクロエと恋に落ち、結婚する。しかしクロエは肺の中に睡蓮が生長する奇妙な病気にかかってしまう・・・。
愉快な青春の季節の果てに訪れる、荒廃と喪失の光景を前にして立ち尽くす者の姿を、このうえなく悲痛に、美しく描き切ったラブストーリー。決定訳ついに登場!

大人のための童話だと思いました。
奏でられた音符を調合してつくるカクテルピアノ、言葉のつうじるハツカネズミ、そして、愛する妻の肺に咲く睡蓮――それぞれのモチーフがかなしみを帯びた夢のよう。
透きとおるほどに美しい旋律が、ひりつくような痛々しさで胸にしみます。

シナモンシュガーの匂いのする雲・・・はだけた乳房と青い花冠のコントラスト・・・
心臓抜きの殺人・・・ある哲学者を異常なまでに狂信する友人・・・
ここにしかないシュールな物語世界は、けれどすべてが美しく詩的で、いまにも崩れ去りそうな危うさのなかに成り立っています。
「きれいな女の子相手の恋愛と、デューク・エリントンの音楽以外は醜いから消えていい。」 そう言い放つボリス・ヴィアンさんは、ほとばしる奇想たちを繊細な言葉の糸でつむぎ出し、紙の上に踊らせてみせてくれています。

クロエの肺に咲く睡蓮が、ふたりの愛を死で覆いつくすまで。
きらめきながら消えていく・・・あぶくのようにはかない青春の日々の物語。

(原題『L'ÉCUME DES JOURS』)
Author: ことり
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