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『祖母の手帖』 ミレーナ・アグス、(訳)中嶋 浩郎

イタリア、サルデーニャの美しい娘だった祖母は、戦時中、空襲で家族を喪った寡黙な男が実家に下宿したのが縁で、愛のない結婚をする。そしてあるとき、持病の結石の治療で訪れた本土の温泉でひとりの「帰還兵」を知る。胸がつまるほど痩せた体に力強い腕と優しい手。片方の脚は木の義足だった。ほどなく二人は、つかのまの、激しい愛の日々を過ごすようになる。帰郷して9か月後、待望の男児が生まれる。それが「わたし」の父だ。
愛の真髄を優雅に描きだす、器楽曲のような小さな物語。

愛に飢えた、ひとりの女性の物語。
互いにベッドの反対側で眠りながら、時おり夫に売春宿のサービスを行う狂気じみた妻。彼女は結石治療に訪れた温泉で、1950年秋、ついにほんものの愛を知る・・・。
物語は終始、その女性の孫である「わたし」目線で語られてゆきます。

祖母は、愛というのは何ておかしなものなんだろう、といつも思った。愛は、ベッドをともにしても、優しくしたりよい行いをしたりしても、生まれないときには決して生まれない。

「わたし」がつづってゆく、祖母の禁断の愛――。
メランコリックな筆致で描かれる生々しさと切なさは、ほろ苦い官能とともにしずかな痛みがうずくように伝わってきました。そうして長い年月が経ち、遺された祖母の手帖と一通の手紙が明かす‘真実’に、はっと息をのむのです。
読み終えたあと、エピグラフに引用された一文がじわじわと沁みてきます。
「もしあなたとこの世で会うことがないのなら、
せめてその不在を感じさせてください」

(原題『Mal di pietre』)
Author: ことり
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