<< 『なんらかの事情』 岸本 佐知子*prev
『クリスマスのてんし』 エルゼ・ヴェンツ‐ヴィエトール、(訳)さいとう ひさこ >>*next
 

『博物館の裏庭で』 ケイト・アトキンソン、(訳)小野寺 健

1952年、英国の古都ヨークの平凡な家庭に生まれたルビー・レノックス。一家はペットショップを営み、お店の2階に暮らしている。部屋の片隅に眠る、古ぼけた写真、ピンク色のボタン、兎の脚のお守り。そんな小さなものたちが、それぞれの時代の記憶を語り始める――。
はかない初恋や、家族とのいざこざ、異国への憧れ。そして、ルビーの母の、祖母の、曾祖母たちの平穏な日々を突然奪っていった、2度の戦争。ルビーの人生を主旋律とする物語は、さかのぼる三代の女たちの人生と響き合いながら、一族の壮大な歴史を奏でる。
ウィットブレッド賞を受賞した、現代の「偉大なる英国小説」。

「あたしは存在している!」
たくましい生命力にみちた、こんな一文で幕を開ける物語。ルビー・レノックスの語りはまだ母のおなかの中・・・それも胎内に芽生えた瞬間(!)にはじまるのです。
ルビーを中心にして、かろやかに、時に滑稽に、豊穣な家族の歴史が語られてゆきます。ふたつの大戦に影響されながらも懸命に生き抜いた女たちの波乱にみちたエピソード。「補注」として語られる過去の人びとも生き生きとして愛らしく、まるで目の前にいるみたい。

生きる、ということがこんなにも大変だった時代。
もっと違う人生があったかもしれないのに・・・そんな思いを胸の奥にくすぶらせながら、ただ目の前の時間をむさぼるように生きるしかなかった女たちの絶望が行間からしたたり落ちてくる。
平凡な家族の歴史にうずもれた数えきれない悲劇、そして彼女たちの喪失感や心残りが、つぎつぎによぎってゆきました。

銀のロケット、祖母の時計、色褪せた写真・・・
とりとめのない小さな品々が秘めてきた、これは記憶の物語。人びとに忘れ去られ、もしかしたら永遠に語られることのなかった、ミステリアスで儚い記憶の物語。

(原題『Behind the Scenes at the Museum』)
Author: ことり
海外ア行(その他) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -