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『アメリカの鳥』 マッカーシー、(訳)中野 恵津子

アメリカ人青年ピーターは、鳥や植物を愛す、ちょっと内気な19歳。パリ留学を前に母とふたり、ニューイングランドの小さな町を訪れる。
4年前、母と暮らしたその地は、アメリカのよき伝統が残る、緑あふれる土地だった。しかし4年の間に自然は失われ、町はすっかり観光地化していた。母は怒り狂い、よきアメリカを取り戻すべくひとり闘う。そんな母と、アナキストだった父に育てられたピーターは、敬愛するカントの哲学に従い、「人を手段として利用してはならない」を行動原理として異国に旅立ってゆく。新訳決定版。

4年ぶりに訪れた町からアメリカワシミミズクがいなくなった・・・。
そんな喪失感からはじまる、内気な青年ピーター・リーヴァイの精神の成長物語。
チェンバロの音色のようにナイーヴな心をもったピーターがヨーロッパに渡り、異国での孤独感や祖国アメリカにたいする戸惑い、自分流の哲学につまずきながら少しずつ大人になっていくさまがゆっくりとていねいに描かれていきます。
19歳になり、カントの言葉「誰であれ人を手段として利用してはならない」を生きる信条とする彼の、義務感にしばられた日々。まるで鳥かごにみずからを閉じ込めてしまった渡り鳥のような、若さゆえの葛藤がほろ苦くてもどかしい・・・。

ベトナム戦争の拡大期。「教養」というものがごく当たり前に必要とされていた時代。
灰色できゅうくつな時を生きた人びとの、けれど清々しい、独特のあかるさをたたえた物語だと思いました。

(原題『BIRDS OF AMERICA』)
Author: ことり
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