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『春と修羅』〔再読〕 宮澤 賢治

以前、『注文の多い料理店』とともに購入した復刻版の詩集です。
函から現れるのは、ざっくりとした麻布に身をつつんだ、どこかよそよそしくすらある温かな手触りの本。
副題に「心象スケッチ」とあるとおり、この世のあらゆるものの儚い瞬きや化学反応、はてしない宇宙の塵ひと粒ひと粒までをも文字にうつし出したみたい。琥珀の陽光、聖玻璃の風、玉髄の雲・・・冬の銀河鉄道、静寂を抱く鉱石、つかのま青く明滅する光と翳。自然の美しさ眩さをうたう詩人、その孤独や哀しみが降り積もる心の嘆きに私はなんどでも胸を突かれる。コバルトの幻想空間をたゆたうような、慎ましいけれどもきららかな一刹那にみちた、ただならぬ詩集です。

(あめゆじゆとてちてけんじや)――
絞るような妹の声、つややかな松の枝に透きとおるあめゆき。
見なれたお椀の藍のもようにも別れ、鋼青壮麗の空にむかう最愛の妹・とし子。
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
(『永訣の朝』より)

そしてやはり 、
わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつの悗ぞ般世任
(あらゆる透明な幽靈の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの悗ぞ般世任
(ひかりはたもち、その電燈は失はれ)
とはじまる序文がとてもとても好きです。
Author: ことり
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