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『白痴 青鬼の褌を洗う女』 坂口 安吾

“戯作者”の精神を激しく新たに生き直し、俗世の贋の価値観に痛烈な風穴をあける坂口安吾の世界。
「堕落論」と通底する「白痴」「青鬼の褌を洗う女」等を収録。奔放不羈な精神と鋭い透視に析出された“肉体”の共存――可能性を探る時代の補助線――感性の贅肉をとる力業。

どこか屈折した女体への憧れ。
妖しさと湿りけを帯びたひと味ちがった色恋の数々――全13編を収めた短篇集。
ものうい雰囲気がしだいに緊張を増し、爆風のような気迫が押しよせてくる『白痴』がすばらしく印象的でした。

『白痴』
時は第二次世界大戦、新聞記者の伊沢の隣には気違いの一家が住んでいた。
気違いの女房は白痴で、ある日彼女が伊沢の家に逃げこんでくる。女をかくまうことにした伊沢。空襲におびえるなかで白痴の女との奇妙な生活がはじまる・・・。
白痴の苦悶は、子供達の大きな目とは似ても似つかぬものであった。それはただ本能的な死への恐怖と死への苦悶があるだけで、それは人間のものではなく、虫のものですらもなく、醜悪な一つの動きがあるのみだった。(中略)
人は絶対の孤独というが他の存在を自覚してのみ絶対の孤独も有り得るので、かほどまで盲目的な、無自覚な、絶対的な孤独が有り得ようか。それは芋虫の孤独であり、その絶対の孤独の相のあさましさ。心の影の片鱗もない苦悶の相の見るに堪えぬ醜悪さ。
理智や抑制や抵抗をそぎ取った時、うかび上がってくる人間の本質について考えました。「絶対的な孤独」。人は、最終的に白痴へと立ち返っていくのでしょうか・・・。

女性の一人称で語られるお話がいくつかあって(『青鬼の褌を洗う女』もそう)、男性目線で書かれたものとの対比もまた面白いです。
Author: ことり
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