<< 『アイスクリームの国』 アントニー・バージェス、(絵)ファルビオ・テスター、(訳)長田 弘*prev
『緑の家』(上・下) バルガス=リョサ、(訳)木村 榮一 >>*next
 

『曲芸師ハリドン』 ヤコブ・ヴェゲリウス、(訳)菱木 晃子

評価:
ヤコブ ヴェゲリウス
あすなろ書房
¥ 1,365
(2007-08)

ハリドンが安心できるのは、曲芸をしているときと<船長>と二人でいるときだけだった。しかし、その<船長>が・・・。
冷たい空気が、秋と港のにおいを運んでくる。「他人を信用しないこと」を信条に生きてきた少年は、たったひとりの友をさがしに、夜の街へととびだした。北の港町を舞台にくりひろげられるだれも知らない奇妙な一夜。スウェーデンからやってきた現代のおとぎばなし。

北欧の小さな港町で<船長>とふたりで暮す曲芸師のハリドン。
誰も信用できなくて、心をとざしているハリドンがやすらげる相手は<船長>だけ。その<船長>がある晩、夜更けになっても帰ってこない・・・。彼はいてもたってもいられなくなり、夜の町にとび出します。
行きつけのジャズバー、公園、広場・・・一輪車にのって大好きな<船長>をさがすハリドンは、とちゅう小さいけなげな野良犬と出会って――?

ひとりぽっちで夜の町をさまようハリドンの張りつめた不安が、ひんやりとした夜気や石畳に溶けあい、ふしぎに妖しげな気配をかもしています。
ハリドンをはじめ、小さな犬も、バーのマダムも、カジノの男も、犬をつかまえる男も、<船長>も・・・登場するのはみな夢を追い、挫折を知り、それでもなお心をうるおしてくれるなにかをもとめている人たち。ハリドンの、<船長>をうしないたくない、っていう気持ちが痛いくらい伝わってきます。
ふるい革張りの洋書からぬけ出したような挿絵も雰囲気たっぷり・・・。
孤独と淋しさがやがて友情と信頼にかわっていく様子、そして帽子のなかにのこった小さな「希望」が心をぽっとあたたかくしてくれる幻想的な夜のメルヘン。お気に入りのお話になりました。

(原題『ESPERANZA』)
Author: ことり
海外ア行(その他) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -