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『猫にかまけて』 町田 康

評価:
町田 康
講談社
¥ 1,680
(2004-11-16)

作家、そしてパンク歌手。
ふたつの顔をもつ町田康さんが猫にかまけきっているエッセイ集。
といっても、この本は猫たちとの生活を単にユーモラスに描いているだけではなくて、楽しさもかなしみも、すべてひっくるめてリアルに描いたエッセイです。
気位が高いココア、強欲なゲンゾー、遊び好きのヘッケ、気性の激しい奈奈。おなじ猫でも、性格はそれぞれ。そんな4頭(「匹」とよぶにははばかられ、「人」とすると馬鹿だと思われるので「頭」に落ちついた、とのこと)との暮らしを、町田夫妻が撮影した写真とともに綴ります。

冒頭はとてもゆかいで、個性あふれるココアとゲンゾーとの暮らしぶりがコミカルに描かれています。「急降下爆撃」「邪魔邪魔邪魔」「通り魔」など凶悪な趣味をもつゲンゾーの、ドアにぶら下がって「サルーン」をするというさらなる暴挙に右往左往してみたり、「まーた。訳の分からぬアホーな原稿などというものを書いている。そのような無意味なことはいい加減やめて、早くわたしを膝に乗せたらどうなの?」なんて高飛車でふてぶてしいココア様に言われてしまったり・・・。
だけど、瀕死の仔猫・ヘッケを拾ったあたりから、町田夫妻は本格的に猫に‘かまけ’始めるのです。病弱なヘッケから目が離せなくなり、必死の看病で、朝も夜も頭はヘッケのことばかり。でも、仕事はしなければならない。仕事に行ってしまった自分が人でなしに思えてくる。ずっと傍にいてやりたかった、もっと遊んでやればよかった、もっともっとやれることがあったのではないか・・・。
「もし死んでも一ヵ月以内に生まれ変わってきなさい。そしたらまた私が拾ってあげる」 そうして夫妻はその後、ヘッケそっくりの仔猫を拾うことになるのです。

町田さんは猫たちとの暮らしのなかで、日々おおくのなにかを得るといいます。
どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた。
猫たちとのやりとりの場面では、人間の滑稽さや無力さを自嘲ぎみに語っていて、猫と人間をおなじ目線(もしかしたら猫の方が上?)でみつめる姿勢がとても好もしい。そして、やがて訪れる悲しみの瞬間――家族同然に暮らした猫たちとの別れ。猫たちがしだいに衰弱していく様子が時間経過とともに描かれ、夫妻のかなしみと猫への愛情の深さが手にとるように伝わってきました。

猫好きはもちろん、そうじゃない人にも強くおすすめしたい本です。
Author: ことり
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