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『ナイン・ストーリーズ』 J.D.サリンジャー、(訳)野崎 孝

もうずいぶん長いこと、私の本棚に立てかけられていた文庫本です。
幾度も手にとり、ひとつふたつお話を読んでは中断(挫折)してしまっていたせいで、冒頭の『バナナフィッシュにうってつけの日』はなんど読んだか分からない・・・。
感覚的、というのかしら?むりに解釈しようとするとお話に拒絶されてしまいそう。
クレイジーな人たちのこわれやすい無垢な感性から、キラっと光るなにかをひろい集めるように読んでいく、そんな本だと思いました。

『バナナフィッシュ―』は、いかにもアメリカらしい母娘のちぐはぐな長電話ではじまります。その可笑しな会話から、精神の病に冒されたシーモアのことがすこしずつうかび上がってくるしかけ。
当のシーモアは、ビーチで女の子に語り聞かせます。哀しい魚たちの話を。
「バナナがどっさり入ってる穴の中に泳いで入って行くんだ。入るときにはごく普通の形をした魚なんだよ。ところが、いったん穴の中に入ると、豚みたいに行儀が悪くなる。ぼくの知ってるバナナフィッシュにはね、バナナ穴の中に入って、バナナを七十八本もたいらげた奴がいる」
バナナフィッシュのファンタジーに対比するように、ドキドキするほど破滅的なラストが儚い余韻をのこしていきます。
滑稽さと突飛さと冷ややかさの奇跡的なバランス!!
この本の最後の短篇『テディ』にでてくる天才少年の末路がこのシーモアだというのも心憎い構成。

9つの物語のうち、なんども読んだ『バナナフィッシュ―』がようやく私の気持ちになじみ始めたように、今回ひと通りしか読んでいないお話たちも、今後なんども読み返すことによってもっと仲良くなれるのかもしれません。
高校時代に読んだ『ライ麦畑でつかまえて』も、再読してみたいです。

(原題『NINE STORIES』)
Author: ことり
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