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『ゾマーさんのこと』 パトリック・ジュースキント、(訳)池内 紀

評価:
パトリック ジュースキント
文藝春秋
¥ 1,550
(1992-11)

ぼくがまだ木のぼりをしていたころ――遠い昔、ずっとずっと昔のこと――身長は一メートルと少し、足のサイズは28、体重ときたら空が飛べるほど軽かった。ウソじゃない、あのころはほんとうに空を飛べた。ほとんど飛べた。

南ドイツの小さな村に住む「ぼく」の少年期のお話です。
風の強い日に坂道を走りおりればふわりと空を飛べたあのころ・・・
するすると木のぼりをしてみたり、生まれてはじめて自転車に乗ったあのころ・・・
そんなみずみずしい日常の節目節目に、雨の日も風の日も雪の日もステッキ片手に黙々と歩きつづけるゾマーさんが、風景のように入りこんできます。
戦争の暗い影を感じさせ、誰もよせつけない孤独な背中。遠い記憶にひそむ冷えびえとした狂気に、「ぼく」は恐れながらも少しずつ惹かれていくのです。
淡くはじけた小さな恋、ヒステリックなピアノの先生・・・ユーモアたっぷりに語られる思い出話に、謎めいたゾマーさんの存在感が哀しげに立ち上ってくる物語。
ジャン=ジャック・サンペさんの挿絵がふよふよと味わい深く、美しい一冊です。

(原題『DIE GESCHICHTE VON HERRN SOMMER』)
Author: ことり
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