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『燃焼のための習作』 堀江 敏幸

評価:
堀江 敏幸
講談社
¥ 1,620
(2012-05-24)

雷雨がやむまで、もうしばらく――
終わらない謎解き、溶けあう会話、習作という名の驚くべき試み。
密室のやり取りが生む小説の快楽!

しだいに近づいてくる雷鳴の轟き。マッチ箱のような雑居ビルの一室。
登場人物は、その部屋で‘なんでも屋みたいなもの’を営んでいる枕木と事務員の子(さとこ)さん、そして依頼人の熊埜御堂(くまのみどう)氏の3人きり。
ワンシチュエーションのお芝居をみているような、しずかに閉じられたお話です。
起承転結はないに等しく、たんたんと、つらつらと、会話と気配が手をつなぎあってすすんでいく、そんなお話の心地よい空気感を楽しんでいました。

お互いのかぼそい縁を愛おしそうにたしかめあう枕木と熊埜御堂氏。
豊かな身振り手振りで、面倒な人びとについて語り聞かせる子さん。
窓の外の激しい雷雨とは対照的に、室内をつつんでいるのは穏やかな静謐。たわいない会話は行きつ戻りつしながらあちこちに広がり、肝心なはずの依頼内容はどこへやら・・・。でも、それもこれもすべてゆったりと味わい深い時間のなかにやさしくやさしく溶けていきます。
物語が終わっても、雷鳴の轟きと3人の話し声、そして「三種混合」のコーヒーの香りがほんのり漂っているみたいです。
Author: ことり
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