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『ほんものの魔法使』 ポール・ギャリコ、(訳)矢川 澄子

世界じゅうの魔術師が集まる町マジェイアに、ある日犬を連れた旅人が現れた。アダムと名乗り、町で出会った少女を助手に、魔術師名匠組合加入のため選考会に参加する。事前審査は見事にクリア。しかし彼のマジックのネタが、分からない。みんな不安になってくる。彼はまさか・・・?不穏な空気の中、本選が始まる。
ほんものの魔法とは何か。ユーモラスで愛に満ちたファンタジー。

マジェイアは、世界の魔術師がつどう魔法都市。
でも、そこで競われている魔法とはすべて種明かしのできるトリックでした。その町にある日、ものいう犬をつれたほんものの魔法使・アダムがやってくるお話です。
マジェイアはいっけん華やかな町だけど、人びとは秘密主義で、権力を争いあい、そのうえとても排他的。アダムが披露したほんものの魔法をはじめこそ驚きのまなざしで賞賛するものの、しだいに気味悪がって、自分たちの理解の及ばないものを排除しようとしはじめます。

そんなまわりの不穏な空気にも、ひょうひょうとして動じないアダムが素敵。
助手になった女の子のジェインもほんものの魔法が信じられず、アダムをピクニックにつれ出し、仕掛をおしえてもらおうとしますが――・・・
「わからないかい、ジェイン。われわれのまわりには魔法がみちみちてるってことが。そのうちのひとつとして説明がつきやしないし、誰ひとりこの秘密の真相を実際に知っている者はないんだ」
ほんものの魔法使が、この世がどんなふしぎな魔法にみちているかをやさしく語る、真昼のまどろみのひとときがとてもみずみずしい。ジェインの心がどんどん目覚めて、きれいな色つきになっていくみたい・・・。

誰もが自分のなかに「空想の魔法」をもっているんだよ、っていうメッセージが伝わってきます。まわりの魔術師たちがドタバタと焦ったり画策したりしているから、アダムの言葉はことさら際だち、しっとりと胸に届くのかしら。
ものいう犬のモプシーの可愛さも忘れがたいです。もこもこの尨犬で、ぱっと見には毛のかたまりにしか見えないモプシー。でも彼はたびたびアダムを危機から救ってくれる頼もしい相棒で、楽しいファンタジーをいっそうワクワクと心躍るものに仕立ててみせてくれています。
さいごになってしまいましたが、きらびやかな魔法と中世ヨーロッパの雰囲気を豊かに伝えてくれる矢川澄子さんの翻訳がほんとうにほんとうに、すばらしく美しいです。

(原題『The Man who was Magic』)
Author: ことり
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