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『遊戯の終わり』 コルタサル、(訳)木村 榮一

肘掛け椅子に座って小説を読んでいる男が、ナイフを手にした小説中のもう一人の男に背後を襲われる「続いている公園」、意識だけが山椒魚に乗り移ってしまった男の変身譚「山椒魚」など、崩壊する日常世界を、意識下に潜む狂気と正気、夢と覚醒の不気味な緊張のうちに描きだす傑作短篇小説集。短篇の名手コルタサルの、夢と狂気の幻想譚。

悪魔の涎・追い求める男 他八篇』にくらべると、ちょっぴりもの足りないかな・・・。
でも写実的なお話や少年少女ものも収められていたりして、そういう意味ではこちらのほうがヴァラエティに富んでいるかもしれません。

はじめて読んだなかでの私のお気に入りは、表題作『遊戯の終わり』。
暑くなると、アルゼンチン中央鉄道の線路ぎわでまいにち‘彫像ごっこ’をした思い出のお話です。
母親たちが昼寝(シエスタ)をするのを待って、こっそりと家をぬけ出す3人の子どもたち。彼らは列車に向かってひとりひとりポーズをとり、乗客と無言のやりとりをかわすのですが、列車の窓から手紙が投げられるようになってからその距離感が崩れはじめます。
どこまでも続いている線路、焼けた石の熱気、複雑でぞくぞくする遊びのルール・・・親にかくれて遊んだ「わたしたちの王国」。秘密めいたスリルと脆くてこわれやすい思春期の心の動きがきらきらと封じこめられていて、ノスタルジックな記憶の余韻につつまれました。夏に読むのにぴったりのお話。

全18篇のうち、『悪魔の涎―』とかさなっているお話が2篇あります。
このかさなっている2篇がやはり好きだったりするのです・・・。

(原題『FINAL DEL JUEGO』)
Author: ことり
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