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『夜の国のクーパー』 伊坂 幸太郎

評価:
伊坂 幸太郎
東京創元社
¥ 1,680
(2012-05-30)

この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない――。これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。
伊坂幸太郎が放つ、10作目の書き下ろし長編。

猫のトム君が漂流者の「私」に語ってくれる、猫からみた人間たちの戦争。
釣り舟に乗っていたはずの「私」が目覚めると――、からだは縛られ草叢に横たわり、胸のうえでは猫がおしゃべり!とびきりファンタスティックなお話です。
ある小さな国の歴史と現在、謎めいたクーパーの兵士の伝説・・・トム君の口からとび出すのは荒唐無稽なできごとばかり。人間たちの国をめぐる愚かな戦いに、人間と猫の関係、さらには猫と鼠の関係が投影されてゆきます。
猫には猫の、鼠には鼠の哲学や言い分があるのが愉快だし、読みどころです。
「自分たちが当然だと思っていることは、本当に当然なのか?運命だと諦めてきた役割は、本当に変更ができないものなのか。大雨や暴風をやり過ごすように、私たちに降りかかる不幸は、やり過ごすほかないのか。いや、そうじゃない。可能性はないわけではない。」

ファンタジーの世界に‘妻に浮気をされた、株取引が趣味の公務員’を漂流させることで、フワフワした心地にリアリティが加わるところがとっても心憎い。
寓話、という点でも、『短くて恐ろしいフィルの時代』(ジョージ・ソーンダーズ)を彷彿させる物語でした。伊坂さんの小説だと、『オーデュボンの祈り』とか、あと『ブックモビール』(『仙台ぐらし』所収)にも共通項がある感じ。
Author: ことり
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