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『かさ』 太田 大八

今日はいちにち、朝からの雨。
開け放した窓からはいってくる雨の音、雨の匂い。
雨の気配が充満するしずかな部屋で、文字のないこの絵本をひらきました。

赤いかさをさした女の子が、おとうさんのかさをもって駅までおむかえにいく絵本。
文字はなく、赤いかさ以外は彩りもないけれど、つややかな音・色・匂いがひらいたページからしっとりとあふれてきます。
池の水面にうまれる無数の波紋、ぱたぱたとかさをうつ雨の音、びしょ濡れの犬がからだをふるわせてまき散らすしずくたち・・・
湿気をふくんだ空気の色、家路をいそぐかさの群れ、雨とドーナツのまざった匂い、雨音でくぐもった大通りの自動車の音・・・

雨の日はあらゆるものが研ぎ澄まされ、色濃い気配を放ちます。この絵本はすこし淋しそうな雨ふる町の夕方の情景を、豊かに伝えてくれています。
ぶじに大好きなおとうさんに会えた女の子。
ふたりで歩く幸せな帰り道――すてきなより道も――に心がにっこりほころびました。
Author: ことり
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